歯列矯正は美しい歯並びを手に入れるための素晴らしい治療ですが、治療期間中には様々なマイナートラブルが起こり得ます。その中でも、「舌」に関する悩みは少なくありません。矯正装置が舌に当たって口内炎ができたり、滑舌が悪くなったり、あるいは無意識の舌の癖が治療の妨げになったりすることもあります。まず、矯正装置による口内炎ですが、これは特に治療初期に起こりやすいトラブルです。装置が舌や頬の内側に擦れることで、粘膜が傷つき炎症を起こします。このような場合は、歯科医院で処方されるワックス(保護材)を装置の当たる部分に貼り付けることで、刺激を和らげることができます。また、刺激の少ない食事を心がけ、口腔内を清潔に保つことも大切です。次に滑舌の変化です。装置に舌が慣れるまでは、サ行やタ行などが発音しにくくなることがあります。これは一時的なものであることがほとんどですが、気になる場合は、意識してゆっくりと話す練習をしたり、舌のトレーニングを行ったりするのも有効です。舌のトレーニングは、正しい舌の位置を覚えるだけでなく、舌の筋肉を鍛え、スムーズな動きを助ける効果も期待できます。そして、最も注意したいのが「舌癖」です。舌で前歯を押す、舌を歯の間に挟む、舌が低い位置にあるなどの癖は、歯列矯正の治療効果を妨げたり、治療後の後戻りの原因になったりします。歯科医師や歯科衛生士から舌の位置や使い方について指導があった場合は、それを真摯に受け止め、改善に努めることが重要です。MFT(口腔筋機能療法)と呼ばれる専門的なトレーニングが必要になることもあります。歯列矯正中に舌のトラブルを感じたら、まずは遠慮なく担当の歯科医師や歯科衛生士に相談しましょう。適切なアドバイスや処置を受けることで、不快な症状を軽減し、治療をスムーズに進めることができます。舌のケアも歯列矯正の重要な一部と捉え、上手に付き合っていくことが、理想の歯並びへの近道となるでしょう。