山田さん(25歳、女性)は、上下顎の著しい叢生(歯がガタガタに重なり合って生えている状態)を主訴に来院されました。特に前歯部の叢生が強く、清掃不良による歯肉炎も見受けられ、審美的な改善と口腔衛生環境の向上を強く希望されていました。初診時のカウンセリングで、山田さんの悩みや治療への期待を詳細に伺い、治療の一般的な流れ、期間、費用について説明しました。その後、精密検査を実施。パノラマレントゲン、セファロレントゲン、口腔内写真、顔貌写真、そして歯列模型を作製するための印象採得を行いました。検査結果を分析したところ、山田さんの叢生は歯の大きさと顎の大きさの不調和(アーチレングスディスクレパンシー)が主な原因であることが判明しました。上下顎ともに歯を並べるためのスペースが著しく不足しており、非抜歯での矯正は困難であると診断しました。治療計画として、上下顎左右第一小臼歯(計4本)を抜歯し、そのスペースを利用して歯を排列することをご提案しました。矯正装置としては、審美性を考慮し、セラミックブラケットとホワイトワイヤーを使用する方針としました。治療期間は約2年半を見込みました。山田さんには、抜歯の必要性、治療のステップ、予想される歯の動き、治療に伴うリスク(痛み、口内炎、歯根吸収の可能性など)について、シミュレーション画像なども用いながら詳細に説明し、十分な質疑応答の時間を設けました。山田さんは熟考の末、この治療計画に同意されました。まず、抜歯に先立ち、口腔衛生指導とスケーリングを行い、歯肉の状態を改善しました。その後、計画通りに小臼歯を抜歯。抜歯部位の治癒を待って、上下顎にブラケットとワイヤーを装着し、本格的な歯の移動を開始しました。初期段階では、主にレベリング(歯の高さや傾きを揃える)を行い、その後、抜歯スペースを閉鎖しながら犬歯を後方へ移動させ、前歯部の叢生を解消していくステップに入りました。月一度の調整では、ワイヤーの交換やパワーチェーン、エラスティックゴムなどを用いて、計画通りに歯が動くよう細かく力をコントロールしました。治療開始から約1年半後には、叢生はほぼ解消され、歯はアーチ状にきれいに並び始めました。