小学三年生の佐藤太郎君は、元気いっぱいでサッカーが好きな男の子。しかし、最近、学校の歯科検診で「歯並びについて、一度専門医に相談してみてください」という手紙をもらってきました。母親の良子さんは、以前から太郎君の前歯が少しガタガタしていることに気づいてはいましたが、男の子だし、まだ乳歯も残っているから大丈夫だろうと、あまり気にしていませんでした。しかし、学校からの指摘を受け、良子さんは少し心配になり、近所で評判の良い矯正歯科クリニックの予約を取りました。初めて訪れた矯正歯科は、明るく清潔な雰囲気で、太郎君も最初は少し緊張していましたが、優しい歯科衛生士さんの声かけにすぐにリラックスした様子でした。院長先生は、太郎君の口の中を丁寧に診察した後、良子さんにこう説明しました。「太郎君の歯並びは、いわゆる二重歯列という状態で、永久歯が生えてくるスペースが不足しているために、歯が重なり合って生えてきていますね。特に下の前歯が顕著です」。そして、いくつかのレントゲン写真や歯の模型を見せながら、現在の状況と、このまま放置した場合に起こりうる問題について、分かりやすく話してくれました。虫歯になりやすいこと、将来的に噛み合わせが悪くなる可能性があることなどを聞き、良子さんはやはり専門医に相談して良かったと感じました。精密検査の結果、太郎君は早期の矯正治療を開始することが望ましいと診断されました。まだ全ての歯が永久歯に生え揃ってはいないものの、顎の成長をコントロールしながら歯を並べるスペースを作ることで、将来的な抜歯のリスクを減らせる可能性があるとのことでした。治療法としては、取り外し可能なプレート型の装置を使って、少しずつ顎を広げていく方法が提案されました。太郎君は、装置を見せてもらうと、「これ、自分でつけたり外したりできるの?」と興味津々。先生から「毎日ちゃんと使えば、歯並びが綺麗になるお手伝いをしてくれるんだよ」と説明され、少し不安そうな顔をしながらも、こくりと頷きました。治療開始に向けて、まずは歯型を取り、太郎君専用の装置が作られることになりました。良子さんは、治療費や通院頻度、日常生活での注意点など、細かな疑問を先生にぶつけ、一つ一つ丁寧に答えてもらいました。費用は決して安くはありませんでしたが、息子の将来の健康のためと考え、治療を決意しました。