こんにちは、歯科医師の田中です。歯列矯正治療を受けられている患者さんから、「歯磨きはどのくらいすれば良いですか?」「磨きすぎは良くないと聞いたのですが…」といったご質問をよく頂きます。矯正装置を装着すると、どうしてもお口の中が複雑になり、食べかすやプラークが残りやすくなるため、丁寧なブラッシングは虫歯や歯周病予防に不可欠です。しかし、良かれと思って行っている過度な歯磨き、いわゆる「磨きすぎ」が、かえってお口の健康を損ねてしまうケースも少なくありません。例えば、硬い歯ブラシで力を入れてゴシゴシ磨くと、歯の表面のエナメル質が摩耗したり、歯茎が傷ついて炎症を起こしたり、さらには歯茎が下がってしまう「歯肉退縮」を引き起こしたりすることがあります。歯肉退縮が進行すると、歯の根が露出し、知覚過敏の症状が出やすくなるだけでなく、見た目にも影響します。では、どのようなケアが最適なのでしょうか。まず、歯ブラシは毛先の柔らかいものを選び、鉛筆を持つように軽く握ってください。そして、力を入れすぎず、歯ブラシの毛先を歯と歯茎の境目、そして矯正装置の周りにきちんと当て、小刻みに振動させるように磨くのが基本です。特に汚れが溜まりやすい装置の周りは、タフトブラシ(毛束が一つになった小さなブラシ)を使うと効果的に清掃できます。また、歯と歯の間やワイヤーの下などは、歯間ブラシやデンタルフロスが必須です。これらの補助清掃用具を適切に使うことで、磨き残しを大幅に減らすことができます。磨く時間については、一概に何分が良いとは言えませんが、一本一本の歯を意識して丁寧に磨くことが大切です。毎食後、そして就寝前には必ず歯磨きをする習慣をつけましょう。そして何より重要なのは、定期的に歯科医院を受診し、専門家によるクリーニングとブラッシング指導を受けることです。私たち歯科医師や歯科衛生士は、患者さん一人ひとりのお口の状態や矯正装置の種類に合わせた最適なケア方法をアドバイスさせていただきます。正しい知識と技術を身につけ、磨きすぎに注意しながら、矯正治療中の大切なお口の健康を守りましょう。
矯正歯科医が語る!歯磨きしすぎのリスクと最適なケア方法