歯列矯正治療は、美しい歯並びと正しい噛み合わせを手に入れるための医療行為であり、そのプロセスはいくつかの段階に分かれています。まず、初めに訪れるのがカウンセリングです。ここでは、患者さんの歯並びに関する悩みや治療への希望を歯科医師が丁寧に聞き取ります。治療の概要や期間、費用の目安などについても説明があり、患者さんが抱える疑問や不安を解消するための重要なステップとなります。この段階で、治療を受けるかどうかをじっくり考えることができます。次に、治療を進める意志が固まった場合、精密検査が行われます。レントゲン撮影(パノラマ、セファロなど)、歯型採得、口腔内写真撮影、顔貌写真撮影などが主な内容です。これらの検査データは、現在の歯並びや顎の状態を正確に把握し、最適な治療計画を立案するために不可欠です。検査結果が出揃うと、歯科医師から診断結果と具体的な治療計画についての詳しい説明があります。どのような装置を使用するのか、抜歯は必要か、治療期間はどのくらいか、費用は総額でいくらかかるのかなど、詳細な情報が提供されます。患者さんはこの説明をよく聞き、疑問点があれば遠慮なく質問し、十分に納得した上で治療に同意することが大切です。治療計画に同意すれば、いよいよ矯正装置の装着準備に入ります。必要に応じて抜歯や虫歯治療、歯周病治療などが事前に行われることもあります。そして、選択した矯正装置(ブラケットとワイヤー、マウスピース型矯正装置など)が装着されます。装置装着直後は、多少の違和感や痛み、話しにくさを感じることがありますが、数日から一週間程度で慣れることがほとんどです。装置装着後は、通常月に一度程度の頻度で通院し、ワイヤーの調整や交換、マウスピースの交換などを行います。この定期的な調整によって、歯は計画通りに少しずつ動いていきます。治療期間は症例によって異なりますが、一般的には一年半から三年程度かかることが多いです。歯が目標の位置まで移動し、歯並びと噛み合わせが整ったら、矯正装置を撤去します。しかし、治療はこれで終わりではありません。動かしたばかりの歯は元の位置に戻ろうとする性質があるため、「保定」という非常に重要な期間に入ります。保定装置(リテーナー)を装着し、歯並びが安定するのを待ちます。