長年の夢だった歯列矯正を社会人になって数年経ち、経済的にも時間的にも余裕ができたので思い切って開始しました。最初は装置の違和感や食事のしにくさに戸惑いましたが、日に日に歯が動いていくのが実感でき鏡を見るのが楽しみになっていきました。しかし、私の矯正生活には「虫歯」という大きな落とし穴が待っていました。矯正を始める前、先生からは「矯正中は虫歯になりやすいので歯磨きは本当に丁寧にしてくださいね」と何度も言われていましたが、正直なところどこか甘く考えていた部分があったのだと思います。仕事で疲れて帰ってくるとついつい歯磨きが疎かになったり間食が多くなったり、フロスや歯間ブラシも最初のうちは真面目に使っていましたがだんだんと面倒になりサボりがちになってしまいました。「まあ、大丈夫だろう」そんな安易な気持ちが後にとんでもない後悔を生むことになるとは、その時は夢にも思っていませんでした。矯正治療が終盤に差し掛かり歯並び自体は理想通りに整ってきた頃、装置が外れる日を心待ちにしていたある日の定期検診で先生から告げられたのは「残念ながら、何か所か虫歯ができてしまっていますね。しかも、結構進行しているものもあります」という衝撃的な言葉でした。頭が真っ白になり、せっかく歯並びは綺麗になったのにまさか虫歯だらけになっているなんて信じられませんでした。装置を外してみるとブラケットがついていた歯の周りや歯と歯の間にくっきりと白い斑点(初期虫歯)や茶色く変色した部分がいくつも現れ、中には神経の近くまで進行している虫歯もあり大掛かりな治療が必要な歯もありました。結局、綺麗な歯並びを手に入れた喜びも束の間、私はそこから長い虫歯治療の日々を送ることになり、詰め物や被せ物で対応しましたが治療費もかさみ何よりも健康な歯を失ってしまったという事実に言葉にできないほどのショックと後悔の念に苛まれました。私のこの苦い経験から、これから歯列矯正を始める方そして現在治療中の方に心から伝えたいのは、「歯並びを整えること」と「歯の健康を守ること」は常にセットで考えなければならないということです。矯正装置は虫歯菌にとって最高の住処であり、歯科医師や歯科衛生士の指導を真摯に受け止め毎日の丁寧なセルフケアと定期的なプロフェッショナルケアを絶対に怠らないでください。