歯列矯正を始めて数ヶ月、あるいはワイヤーを調整した直後などに、ふとした瞬間に口の中から「ミシミシ」「キシキシ」といった微かな音が聞こえてくることがあります。特に食事中や、ぐっと歯を食いしばった時などに感じやすく、「え、歯が割れたりしないよね?」「装置が壊れたのかな?」と、一瞬不安に駆られる方も少なくないのではないでしょうか。私自身も矯正経験者ですが、この不思議な音には何度か遭遇し、そのたびにドキッとした記憶があります。この音の正体は何なのでしょうか。そして、心配する必要はあるのでしょうか。多くの場合、歯列矯正中に聞こえる「ミシミシ」という音は、歯が動いている過程で生じる生理的な現象の一つと考えられています。歯は、矯正装置によって持続的な力を加えられると、歯根と歯槽骨の間にある歯根膜というクッションのような組織の中で少しずつ移動していきます。この時、歯の進行方向側の骨は吸収され、反対側の骨は新しく作られるというリモデリングが起こります。この骨の改変や、歯根膜が引き伸ばされたり圧迫されたりする際に、微細な音が発生することがあるのです。また、歯と矯正装置(ブラケットやワイヤー)が擦れ合ったり、装置自体がわずかにきしんだりすることで音が生じることもあります。特に新しいワイヤーに交換したり、強い力をかけ始めたりした直後は、歯が活発に動こうとするため、このような音を感じやすい傾向にあります。私の場合、特に硬いものを噛もうとした時や、夜寝ている間に無意識に食いしばっていた時などに、奥歯のあたりから「ミシッ」という小さな音が聞こえることがありました。最初はとても驚きましたが、歯科医師に相談したところ、「それは歯が順調に動いている証拠の一つですよ。痛みや装置の明らかな破損がなければ、過度に心配する必要はありません」と言われ、少し安心したのを覚えています。もちろん、音がするたびに毎回「歯が動いている!」とポジティブに捉えられたわけではありませんが、少なくともパニックになることはなくなりました。ただし、全ての「ミシミシ音」が問題ないわけではありません。もし音が非常に大きかったり、持続的に聞こえたり、強い痛みを伴ったり、あるいは矯正装置の一部が明らかに浮いたり外れたりしているような場合は、何らかのトラブルが起きている可能性も考えられます。
矯正中のミシミシ音!私の歯は大丈夫なの?