念願の歯列矯正を始めて数ヶ月。歯が少しずつ動いている実感はあったものの、私は思わぬ壁にぶつかっていました。それは「舌」の存在です。矯正を始めるまで、自分の舌の位置なんて気にしたこともありませんでした。しかし、歯科医師から「舌が正しい位置にないと、歯並びが後戻りする可能性がありますよ」と指摘され、初めて自分の舌癖に気づかされたのです。私の場合は、無意識のうちに舌で下の前歯を押してしまう癖があったようです。装置がついた当初は、口の中に異物がある感覚で、余計に舌が落ち着かず、どこに置けば良いのか分かりませんでした。特に食事の時や会話の時に、舌が装置に当たって痛むこともしばしば。口内炎も頻繁にでき、喋りにくさを感じることもありました。先生からは、舌の先を上の前歯の裏側の少し膨らんだ部分(スポット)につけ、舌全体を上顎に吸い付けるように意識するよう指導されました。これが本当に難しくて、最初は数秒も保てませんでした。気づくと舌はいつもの低い位置に戻ってしまったり、前歯を押してしまったり。まるで言うことを聞かないペットのようでした。そこで私は、日常生活の中で意識的に舌のトレーニングを取り入れることにしました。信号待ちの時間、電車の中、家でリラックスしている時など、ふとした瞬間に舌の位置を確認し、正しい位置に戻す練習を繰り返しました。歯科衛生士さんに教えてもらった、舌を鳴らす運動や、舌を上顎に吸い付けて「ポン」と音を出す練習も、最初はうまくできませんでしたが、根気強く続けました。数週間経つと、少しずつですが舌を正しい位置に保てる時間が長くなってきたのです。食事の際も、以前より舌の動きをコントロールできるようになり、装置に当たる回数も減りました。滑舌も徐々に改善され、矯正治療へのモチベーションも再び上がってきました。まだ完璧とは言えませんが、歯列矯正は歯を動かすだけでなく、こうした口腔内の機能的な側面も改善していくものなのだと実感しています。この舌との格闘は、美しい歯並びを手に入れるための、そしてそれを維持するための大切なプロセスなのだと、今では前向きに捉えています。
私の歯列矯正と舌の格闘記