歯列矯正を終えて数年が経ちますが、正直に言うと、心のどこかで「やらなきゃよかったかもしれない」という思いが消えずにいます。もちろん、歯並び自体は以前より格段に良くなり、見た目のコンプレックスは軽減されました。でも、それと引き換えに失ったもの、あるいは新たに抱えることになった悩みもあるのです。私が矯正を始めたのは20代半ば。長年の夢だった綺麗な歯並びを手に入れるため、費用も時間も覚悟の上でした。選んだのは、目立ちにくいと言われたセラミックブラケットの表側矯正。しかし、実際に装置をつけてみると、想像以上に口元の違和感が強く、滑舌も悪くなり、仕事でのプレゼンテーションなどではかなり苦労しました。食事も、食べ物が挟まるのが気になって外食が億劫になり、友人とのお付き合いも減ってしまったように感じます。そして何より辛かったのが、治療中の痛みと口内炎です。ワイヤーを調整した後の数日間は、まともに食事ができないほどの痛みが続き、鎮痛剤が手放せませんでした。口内炎も頻繁にでき、その度に会話や食事が苦痛でした。歯科医院に相談しても、「矯正治療にはつきものですから」と軽く流されてしまうこともあり、孤独感を覚えたこともあります。治療期間は約3年。ようやく装置が外れた時の解放感は言葉にできませんでした。しかし、喜びも束の間、今度は「ブラックトライアングル」という新たな問題に直面しました。歯と歯の間の歯茎が下がり、黒い三角形の隙間ができてしまったのです。これは、加齢や歯周病だけでなく、矯正治療によって歯が動いた結果、元々歯槽骨が薄かった部分の歯茎が下がって生じることがあるそうです。見た目も気になりますし、食べ物も詰まりやすくなりました。また、噛み合わせについても、完全に満足しているわけではありません。確かに大きなズレはなくなりましたが、時々、顎に違和感を覚えたり、特定の場所で噛みにくさを感じたりすることがあります。歯科医師に相談しても、「許容範囲です」と言われるばかりで、なかなか納得のいく説明は得られませんでした。そして、何よりも後悔しているのが、リテーナー生活の煩わしさです。