歯列矯正治療において「噛むと痛い」という不快な症状は、多くの方が経験するものです。しかし、この痛みを完全にゼロにすることは難しいものの、いくつかの事前準備や賢い対処法を知っておくことで、その程度を軽減したり、精神的な負担を和らげたりすることは可能です。まず、矯正治療を開始する前、あるいはワイヤー調整の予約日が近づいてきたら、心と体の準備を始めましょう。具体的には、調整日の数日前から、意識的に柔らかい食事を摂るように心がけることが有効です。これにより、調整直後に急に食事内容を変えるストレスを軽減できますし、胃腸への負担も少なくなります。また、調整当日は、治療前にしっかりと食事を済ませておくことをお勧めします。なぜなら、調整後はしばらく痛くて食事がしづらくなる可能性が高いからです。空腹の状態で痛みに耐えるのは精神的にも辛いものです。次に、痛み止め薬の準備です。歯科医師に相談の上、市販の鎮痛剤(例えばアセトアミノフェンやイブプロフェンなど)を事前に用意しておくと安心です。調整後、痛みが強くなってきたと感じたら、我慢せずに早めに服用することで、痛みのピークを抑える効果が期待できます。ただし、服用する種類や量については、必ず歯科医師や薬剤師の指示に従ってください。矯正装置が口の粘膜に当たって痛む場合に備えて、保護用の矯正用ワックスも必須アイテムです。ブラケットやワイヤーの端が頬の内側や舌に擦れて口内炎ができると、噛む痛みと相まって非常に辛くなります。ワックスは、ちぎって丸めて装置の気になる部分に貼り付けるだけで、粘膜を保護し、刺激を和らげてくれます。調整時には、担当の歯科医師や歯科衛生士に、今回の調整で特に痛みが予想される箇所や、痛みの持続期間の目安などを事前に確認しておくことも大切です。痛みの見通しが立つだけでも、精神的な不安はかなり軽減されます。また、痛みが強い時の食事の工夫として、栄養価の高いスープやスムージー、ゼリー飲料などをストックしておくのも良いでしょう。噛まずに栄養を摂取できるものは、痛む時期の大きな助けとなります。さらに、冷却も有効な場合があります。痛む部分の頬の外側から、タオルで包んだ保冷剤などを短時間当てることで、炎症を和らげ、痛みを軽減する効果が期待できます。ただし、冷やしすぎは血行を悪くする可能性もあるので、適度に行いましょう。
矯正の痛みを減らす賢い事前対処法