歯列矯正と鼻炎やアレルギーが直接的に関連しているという医学的根拠は、現時点では明確には確立されていません。歯列矯正は歯並びや噛み合わせを改善する治療であり、鼻炎やアレルギーは免疫系の反応や鼻腔の炎症が原因で起こる疾患だからです。しかし、間接的な影響や、治療中の注意点として考慮すべきいくつかの側面があります。まず、口呼吸との関連です。不正咬合、特に開咬(前歯が噛み合ない状態)や上顎前突(出っ歯)などがあると、唇が自然に閉じにくく、無意識のうちに口呼吸になっていることがあります。口呼吸は、鼻呼吸に比べて、ホコリやアレルゲン、冷たく乾燥した空気を直接気道に取り込みやすいため、鼻炎や喘息などのアレルギー症状を悪化させる要因の一つと考えられています。歯列矯正によって歯並びが改善され、唇が自然に閉じやすくなり、鼻呼吸が促されるようになれば、理論的にはアレルゲンの吸入量が減り、鼻炎やアレルギー症状の軽減に繋がる可能性も考えられなくはありません。しかし、これはあくまで間接的な効果であり、歯列矯正がアレルギー体質そのものを改善するわけではありません。逆に、矯正装置を装着することによる影響も考慮する必要があります。特に固定式の矯正装置(ブラケットやワイヤー)は、口腔内に異物がある状態であり、清掃がしにくくなるため、プラーク(歯垢)が溜まりやすくなります。プラーク中の細菌がアレルギー反応を誘発したり、既存のアレルギー症状を悪化させたりする可能性はゼロではありません。また、まれに矯正装置の金属成分(ニッケルなど)に対してアレルギー反応を起こす方もいます。金属アレルギーが疑われる場合は、事前にパッチテストなどを行い、アレルギー対応の装置(セラミック製やプラスチック製など)を選択する必要があります。矯正治療中に鼻炎やアレルギー症状が悪化した場合は、まず耳鼻咽喉科やアレルギー専門医に相談し、適切な治療を受けることが最優先です。その上で、矯正担当医にも状況を伝え、口腔内の清掃状態や装置について相談すると良いでしょう。例えば、鼻詰まりがひどい時期には、歯型を取る際に不快感が強くなることも考えられます。