物心ついた頃から、私の横顔はコンプレックスの種でした。いわゆる「しゃくれ」、医学的には下顎前突というらしいのですが、下の歯が上の歯より前に出ていて、口を閉じると下唇が少し突き出たように見えるのが嫌でたまりませんでした。友達と写真を撮る時も、できるだけ正面を向くようにしたり、横顔が写らないように気を遣ったり。食事の時も、前歯でうまくものが噛み切れず、奥歯ばかりで噛んでいるような感覚がありました。滑舌も少し悪く、特にサ行が言いにくいことも悩みの一つでした。高校生くらいから歯列矯正をしたいと漠然と思っていましたが、費用も高いし、治療期間も長いと聞いて、なかなか踏み出せずにいました。大学生になり、アルバイトでお金を少しずつ貯め始め、いよいよ本気で矯正治療を考えようと決意しました。いくつかの矯正歯科を回ってカウンセリングを受け、私の場合は骨格的な要因も少しあるけれど、歯列矯正だけでも見た目の改善はある程度期待できるし、噛み合わせも良くなると説明を受けました。ただし、完全に理想的な横顔にするには外科手術も選択肢にあるとのことでしたが、まずは矯正だけで頑張ってみることにしました。選んだのは、表側のワイヤー矯正です。装置をつけた最初の1週間は、口内炎との戦いでした。喋りにくく、食事もままならず、心が折れそうになりました。でも、鏡を見るたびに「これで変われるんだ」と自分に言い聞かせました。月に一度の調整日には、ワイヤーを締められる痛みがありましたが、歯が少しずつ動いている証拠だと感じると、それも乗り越えられました。特に下の前歯を後ろに下げる段階に入ってからは、目に見えて変化が現れ始め、横顔の印象が少しずつ変わっていくのが嬉しかったです。治療期間は約2年半。長いようであっという間でした。装置を外した日、鏡に映った自分の笑顔を見た時の感動は今でも忘れられません。気にしていた下唇の突出感もかなり改善され、横顔にも自信が持てるようになりました。何より、前歯でしっかりものが噛めるようになったこと、滑舌が良くなったことが生活の質を大きく変えてくれました。もちろん、治療後の保定期間も重要で、リテーナーをしっかり使っています。しゃくれで悩んでいた頃は自分に自信が持てず、どこか消極的だった私ですが、歯列矯正を終えてからは、人前で笑顔を見せることに抵抗がなくなり、性格も明るくなったように思います。