歯列矯正を始めると、多くの方が「しっかり磨かなければ」という意識から、歯磨きの回数や時間を増やしがちです。もちろん、矯正装置が付いていると汚れが溜まりやすくなるため、丁寧な清掃は非常に重要です。しかし、ただ闇雲に回数を増やしたり、長時間ゴシゴシ磨いたりすることが、必ずしも良い結果に繋がるとは限りません。むしろ、「歯磨きのしすぎ」は歯や歯茎に負担をかけ、知覚過敏や歯肉退縮といったトラブルを引き起こす可能性も指摘されています。大切なのは、歯磨きの「回数」や「時間」といった量よりも、一度一度の「質」を高めることです。具体的には、歯ブラシの毛先を歯面や矯正装置にきちんと当て、優しい力で細かく振動させるように磨くことが基本です。特にブラケットの周りやワイヤーの下はプラークが残りやすいポイントなので、意識して丁寧に磨きましょう。また、歯ブラシだけでは落としきれない汚れも多いため、歯間ブラシやタフトブラシ、デンタルフロスといった補助的な清掃用具を併用することが極めて効果的です。これらの道具を正しく使うことで、歯ブラシが届きにくい部分のプラークを効率的に除去できます。毎食後すぐに磨くのが理想的ではありますが、難しい場合は、少なくとも就寝前には時間をかけて質の高い歯磨きを行うことを心がけてください。歯科医院で定期的にプロのクリーニングを受け、正しい歯磨き方法の指導を受けることも、磨きすぎを防ぎ、効果的なプラークコントロールを維持するために大変有効です。