近年、手軽に始められるマウスピース矯正が人気ですが、特に「安い」ことを前面に打ち出したサービスも増えてきました。一般的なワイヤー矯正や、歯科医院で精密な検査・診断のもとに行われるマウスピース矯正と比較して、なぜこれほどまでに費用を抑えることが可能なのでしょうか。その理由の一つとして、治療範囲を限定しているケースが挙げられます。例えば、前歯のわずかな隙間や軽度の叢生(ガタガタ)など、比較的簡単な症例に特化することで、治療期間を短縮し、使用するマウスピースの枚数を減らし、結果としてコストを抑えています。また、オンライン診療を主体とし、歯科医師が直接対面で診察する回数を最小限にしたり、人件費や設備費の少ない海外でマウスピースを製造したりすることで、固定費を削減している場合もあります。しかし、安さだけに目を向けてしまうと、思わぬ落とし穴にはまる可能性も否定できません。治療開始前の精密検査が不十分であったり、治療計画の妥当性や実現性が低い場合、期待した効果が得られないばかりか、噛み合わせが悪化するなどのトラブルに繋がることもあります。賢く安いマウスピース矯正を選ぶためには、まず自分の歯並びの状態を正確に把握し、その治療が本当に軽微な範囲で済むのかを歯科医師に相談することが重要です。また、提供されるサービス内容を細かく確認し、治療を担当する歯科医師の経験や実績、万が一のトラブル時のサポート体制、追加費用の有無などをしっかりと比較検討する必要があります。安さは魅力的な要素ですが、それ以上に大切なのは、安全かつ確実に理想の歯並びを手に入れることであることを忘れないでください。