こんにちは、歯科医師の山田です。最近、患者さんから「インターネットで見た安いマウスピース矯正ってどうなんですか?」というご質問をいただく機会が増えました。確かに、従来の矯正治療に比べて手軽な価格で始められるマウスピース矯正サービスは魅力的ですよね。これらの低価格帯のサービスの多くは、治療対象を軽度な歯並びの乱れに限定したり、オンラインでのやり取りを主軸にしたり、歯科医師が直接関与する工程を減らしたりすることでコストを削減しています。例えば、初診のカウンセリングや歯型の採取、治療計画の立案までをオンラインや郵送で行い、後は患者さん自身でマウスピースを交換していくというスタイルです。これにより、歯科医院に通う手間や時間、そして費用を抑えることができるというメリットがあります。しかし、歯科医師の立場から見ると、いくつかの注意点も指摘せざるを得ません。まず、最も重要なのは「診断の精度」です。歯並びの問題は、見た目だけでなく、顎の骨格や噛み合わせ全体との関連で評価する必要があります。精密なレントゲン検査や口腔内診査なしに、写真や簡単な歯型だけで正確な診断と適切な治療計画を立てることは非常に困難です。不適切な治療計画は、歯が期待通りに動かないだけでなく、噛み合わせの不調や歯根吸収などのリスクを高める可能性があります。また、治療中にトラブルが発生した場合の対応も重要です。すぐに歯科医師に相談でき、適切な処置を受けられる体制が整っているかを確認する必要があります。格安のマウスピース矯正を選ぶ際には、単に価格だけでなく、歯科医師がどの程度治療に関与するのか、精密検査は行われるのか、治療計画は妥当か、トラブル時のサポート体制は万全か、といった点をしっかりと確認することが肝心です。可能であれば、複数のクリニックやサービスを比較検討し、疑問点は遠慮なく質問して、納得のいく治療を選んでください。安かろう悪かろうでは、時間も費用も無駄になってしまいます。