歯列矯正を始めてからの一年間は、歯並びの変化とともに、食生活にも大きな変化が訪れる期間です。矯正装置、特にブラケットやワイヤーを装着している場合、これまで当たり前のように食べていたものが食べにくくなったり、避けるべきものが増えたりします。まず、多くの人が直面するのが「硬いもの」との戦いです。お煎餅やナッツ類、硬いパンの耳、骨付き肉などは、装置を破損させたり、歯に強い痛みを感じさせたりする原因となるため、自然と避けるようになります。リンゴや人参のような硬い野菜や果物も、丸かじりはせず、小さく切ったりすりおろしたりする工夫が必要になります。次に気をつけたいのが「粘着性の高いもの」です。キャラメルやお餅、ガムなどは、装置に絡みつきやすく、取り除くのが非常に困難です。無理に取ろうとすると装置が外れてしまうこともあるため、矯正期間中は我慢するのが賢明でしょう。また、「繊維質の多い野菜」なども、ワイヤーやブラケットの間に挟まりやすく、食後の歯磨きに手間がかかるため、敬遠しがちになるかもしれません。ほうれん草やニラなどは、細かく刻んで調理するなどの工夫が求められます。一方で、矯正一年目に活躍するのが「柔らかくて食べやすいもの」です。お粥や雑炊、うどん、スープ、ヨーグルト、プリン、豆腐、マッシュポテトなどは、歯への負担が少なく、痛みがある時期でも比較的楽に食べられます。鶏ひき肉や白身魚なども、調理法を工夫すれば美味しくいただけます。麺類も、スパゲッティのような弾力のあるものよりは、そうめんや柔らかく煮込んだうどんの方が食べやすいでしょう。食事の際は、前歯で噛み切るのではなく、奥歯でゆっくりと噛むように意識することも大切です。食べ物はあらかじめ一口サイズに小さくカットしておくと、噛む負担を軽減できます。外食の際も、メニュー選びには少し気を使うようになります。カレーライスやミートソーススパゲッティなどは、装置に色が沈着しやすいことがあるため、注意が必要です。矯正治療中の一年間は、このように食生活に様々な制約や工夫が伴いますが、これも美しい歯並びを手に入れるための一時的な我慢と捉え、栄養バランスを考えながら、食べられるものを上手に選んでいくことが大切です。そして、何よりも重要なのは、食事の後はできるだけ早く、丁寧に歯磨きをすることです。
矯正一年食生活の変化と賢い選択