歯列矯正がもたらす数々の素晴らしいメリットについて、これまで様々な角度からお話ししてきました。自信に満ちた笑顔、向上する口腔衛生、そして全身の健康への好影響。これらはすべて、矯正治療が提供する紛れもない真実です。しかし、どんな医療にも光と影があるように、歯列矯正もメリットばかりではありません。最高の決断を下すためには、その対価として伴う可能性のあるデメリットや注意点についても、事前に正しく理解しておくことが不可欠です。まず、誰もが直面するのが「痛み」や「違和感」です。装置を初めて装着したときや、月に一度の調整を行った後の数日間は、歯が浮いたような、あるいは締め付けられるような鈍い痛みを伴うことがほとんどです。食事の際にも、硬いものが食べにくくなる時期があります。この不快感は徐々に慣れていきますが、治療期間中、繰り返し経験することになります。次に、日常生活における「制約」です。ワイヤー矯正の場合、装置に食べ物が絡まりやすく、歯磨きにはこれまで以上の時間と手間がかかります。これを怠ると、虫歯や歯肉炎のリスクが高まります。また、粘着性の高いキャラメルやガム、硬い煎餅などは、装置の破損を避けるために控える必要があります。見た目の問題も無視できません。特に表側の金属装置は目立ちやすく、多感な時期や人前に立つ職業の方にとっては、大きなストレスとなる可能性があります。もちろん、セラミックブラケットや裏側矯正、マウスピース矯正といった目立ちにくい選択肢もありますが、それぞれに費用や適応症例の違いがあります。そして、忘れてはならないのが、治療後の「後戻り」のリスクです。歯は、治療後も元の位置に戻ろうとする性質があります。これを防ぐために、治療後も一定期間、保定装置(リテーナー)を装着し続ける必要があります。この保定を怠ると、せっかく綺麗になった歯並びが再び乱れてしまうことがあるのです。これらの点を十分に理解し、それでも得られるメリットの方が大きいと確信できたとき、あなたは後悔のない歯列矯正への一歩を踏み出すことができるでしょう。
メリットだけじゃない?決断前に知っておきたいこと