歯列矯正を検討する際、インターネット上で「矯正したら老け顔になった」「ほうれい線が深くなった」といった書き込みを目にし、不安に感じたことがある方は少なくないでしょう。美しい歯並びを手に入れるための治療が、かえって見た目の悩みを増やしてしまうとしたら、それは本末転倒です。この「矯正による老け顔」という現象は、残念ながら全くの嘘ではありません。特定の条件下では、実際に起こりうる事象なのです。その主な原因は、歯を動かすことによる顔の骨格と軟組織(皮膚や筋肉、脂肪)のバランスの変化にあります。特に、口元の突出感を改善するために上下左右の小臼歯などを抜歯して歯を大きく後ろに下げる治療を行った場合に、そのリスクが高まる傾向があります。口元が大きく後退すると、これまで歯によって支えられていた唇や頬の皮膚が相対的に余ってしまい、たるみとして現れることがあります。これが、ほうれい線やマリオネットラインが深くなる原因の一つです。また、矯正治療中は装置の違和感や痛みから、硬いものを避けて柔らかい食事中心になりがちです。これにより、食べ物を噛むための筋肉(咀嚼筋)が使われなくなり、痩せてしまうことがあります。特に頬周りの筋肉がボリュームダウンすると、頬がこけて見え、疲れた印象や老けた印象を与えてしまうのです。さらに、歯を動かすことで顔の脂肪が減少したり、再配置されたりすることも、顔貌の変化に影響を与えると言われています。しかし、これらの変化は全ての矯正治療で起こるわけではありません。歯科医師が患者一人ひとりの骨格、歯の傾き、唇の厚みや筋肉のつき方といった軟組織の状態を精密に分析し、適切な治療計画を立てることで、こうしたリスクは最小限に抑えることが可能です。安易に「抜歯ありき」で考えるのではなく、顔全体のバランスを考慮した慎重な診断こそが、失敗を避ける鍵となるのです。
歯列矯正で老け顔になるという噂の真相