歯列矯正の装置が外れてから、もうすぐ一年が経とうとしています。長い治療期間を終えた今、私が日々感じているのは、想像以上に多くの、そしてささやかな幸せです。それは、劇的な人生の変化というよりは、日常のワンシーンワンシーンが、以前よりも少しだけ色鮮やかに、そして楽しくなった、という感覚に近いかもしれません。一番の変化は、食事の時間です。矯正前は、前歯でうまく食べ物を噛み切ることができず、麺類をすするのも苦手でした。硬いお煎餅やリンゴの丸かじりなんて、もってのほか。それが今では、何でも美味しく、そして綺麗に食べられるようになりました。一口一口をしっかり噛みしめることができる幸せ。食べ物の本来の味や食感を存分に楽しめるようになったことは、私の毎日の食生活を本当に豊かなものにしてくれました。次に変わったのは、人とのコミュニケーションです。以前は、自分の口元に自信がなくて、話すときも笑うときも、どこかおどおどしていました。でも今は違います。口元を気にすることなく、相手の目を見て話せるし、面白いことがあれば、腹の底からガハハと笑えるようになりました。この変化は、友人関係や職場での人間関係にも良い影響を与えている気がします。自分から積極的に話しかけられるようになったし、周りからも「なんだか明るくなったね」と言われることが増えました。そして、何気ない瞬間に感じる幸せもあります。例えば、リップを塗るとき。綺麗に並んだ歯に、お気に入りの色の口紅が映えるのを見ると、それだけで気分が上がります。歯磨きの時間も、以前は汚れが溜まりやすい場所を必死に磨く苦痛な時間でしたが、今はツルツルになった歯を維持するための、楽しいメンテナンスタイムに変わりました。歯列矯正は、私のコンプレックスを解消してくれただけでなく、食事、会話、美容といった、日々の暮らしの中にたくさんの小さな喜びをプレゼントしてくれたのです。