広告代理店に勤務するCさん(32歳)は、学生時代から続く慢性的な肩こりと、月に数回は鎮痛剤が手放せないほどの頭痛に悩まされていました。マッサージに通ったり、整体を試したり、様々な枕を試したりしましたが、どれもその場しのぎの効果しか得られませんでした。彼女自身、その不調がまさか歯並びと関係しているとは夢にも思っていませんでした。Cさんの悩みは、下の歯が上の歯より前に出ている「受け口(反対咬合)」という歯並びでした。見た目のコンプレックスから歯列矯正を考え、当院のカウンセリングに訪れたのが全ての始まりでした。精密検査の結果、Cさんの噛み合わせは著しく不安定で、下顎が正常な位置からずれていることが判明しました。私たちは、この噛み合わせのズレが、顎周りの筋肉(咀嚼筋)に過度な緊張をもたらし、それが首や肩の筋肉にまで連鎖して、肩こりや緊張型頭痛を引き起こしている可能性が高いと説明しました。Cさんは半信半疑でしたが、コンプレックス解消を主目的に矯正治療を開始することを決意しました。治療は、抜歯を伴うワイヤー矯正で、上下の顎のバランスを整えながら、正しい噛み合わせを構築していくという計画でした。治療が中盤に差し掛かり、噛み合わせが少しずつ改善されてきた頃、Cさんから驚きの報告がありました。「先生、最近、あれだけひどかった肩こりが楽になった気がするんです。そういえば、頭痛薬を飲む回数も減りました」。そして、約2年半の治療を終え、正しい噛み合わせが確立された頃には、彼女を長年苦しめてきた肩こりと頭痛は、ほとんど感じなくなっていたのです。Cさんの事例は、噛み合わせがいかに全身のバランスに影響を与えているかを示す典型的なケースです。口は、体の中心軸である背骨の真上に位置しています。その土台である噛み合わせが安定することで、頭の位置が正常化し、首や肩への負担が軽減される。このメカニズムが、Cさんの長年の不調を根本から解決したのです。歯列矯正は、美しい笑顔だけでなく、健やかな体という、かけがえのない財産をもたらすことがあるのです。
肩こりと頭痛が消えた?噛み合わせ改善の驚くべき効果